生前整理について
生前整理と少し似ているのが、遺品整理です。遺品整理は人が亡くなった際に遺された家族が遺品を片付ける事を指し、生前整理はご自身が元気な間に事前に身辺をある程度片付けておく事を指します。生前整理というと、病気を患ってしまったりある程度の年齢になったら…というイメージを持たれる方が多いとは思いますが、時間・体力共に余裕がある内に亡くなった後を考えて行うのが生前整理です。近年では若い世代でも生前整理を行う方も増えてきているそうです。
生前整理から派生した概念として、老前整理とも呼ばれるものがあります。先に述べた若い世代の生前整理はこれにあたり、老いる前に身辺の整理する場合を指します。中には「早すぎる・縁起が悪い」と考える方もいらっしゃるかと思います。しかし死は突然やってくるものですし、事故や災害などによって予兆もなく命を落とすという可能性は誰しもゼロではありません。ですから、亡くなった後のことを考えて身の回りを片付けておく事に早い・遅いや縁起の良し悪しはないという事です。
生前整理を行う大きな目的は、他の方に見られたら恥ずかしい物やデリケートな事を整理できるという事も勿論ありますが、一番は亡くなった後に家族の方に苦労や負担をかけない為と言えます。亡くなった方の遺品を何の準備もなく整理するのは想像以上に大変な事が多く膨大な遺品の山を片付けるのは肉体的にも精神的にも負担が大きいと耳にします。遺品整理の代行などが様々な方面のメディアでも取り上げられていますがそれなりの金額が掛かってくるものですから金銭的な負担をかけることになってしまいます。残された家族にこうした苦労や負担をかけない為にも、不要な物を減らす・譲り先を決めておいたりする生前整理は大切なのです。
生前整理を行う事は家族だけでなく自分自身の為にもなります。生前整理をすると断捨離したように本当に必要なものだけがあるシンプルな環境を整える機会にもなるからです。ミニマリストという最小限のシンプルな生活形式が流行する若い世代にとっても生前整理が生活を見直すいい機会となっているのかもしれません。
生前整理を実際にしてみようといざ思っても、まずどこから何を手を付けていいのか分からなくなうこともあると思います。生前整理で主に手をつけるのは大きく分けて財産と物になります。まず、適当に目が付くところから手を付けるのではなく「何をどのくらい持っているのか」を把握するところから始めると良いでしょう。
まずは財産についての話です。財産とは現金や預貯金のだけでなく、家や土地・車・株式証券等・宝石類・骨董品などのことを指します。財産については何をどれくらい持っているのかを把握した上で、財産目録を作るかエンディングノートなどに書き出す事をおすすめ致します。人が亡くなった後には相続が起こりますので遺族は相続財産を分けるという事になりますので、実際に財産がどれ程あるのかという事を調べるとなると時間や手間がかかるので目録などで具体的に記しておくと遺族も一から調べるといったような手間や時間を省くことができます。更に財産を早めに把握しておくと、相続税の対策を行う事も出来ます。場合によっては生前贈与などで税金対策をすることも可能なので目録を作った際には専門家に相談してみても良いでしょう。
次に物についての話です。亡くなった後に大量に物が残されていると家族の方はその処分に頭を悩ませる事になってしまいます。衣類や思い出の品などは捨てるタイミングがなかったり、思い入れがあったりと溜め込んでしまっている場合もあると思いますが本当に必要な物以外は処分する作業に取り組みましょう。無理に全てを捨てなければならない訳ではありませんから、何を処分し何を残すのかを見極める事が大切です。見極めのポイントは、今現在使っている物と一年以上使っていない物に別け、使っていない物の中から不用品(壊れていたり使えない物)と不要品(自分にとってはいらない物だけど譲り先があるか売れる物)に別けて不用品は処分しましょう。不要品については、譲り先を決めて譲るかリサイクルショップやフリマアプリに出品するなどして、ご自身の手元からなくすことが大切です。近年では、インターネットや雑誌・本などに片付けや断捨離についての知識が沢山ありますからそれらを参考にし、少しずつ自分のペースで無理のない程度に身辺を身軽にしていきましょう。
注意点について
亡くなった後の事は自分ではどうすることもできません。葬儀のあげ方や財産の分け方・身辺の物の処分の仕方などは希望がある場合にはしっかりと文面に記しておくとご自身の為だけでなく家族が困らなくて済みます。特に財産の分与については確実に自分の意思を通したい場合には遺言書を作らなければいけません。遺言書には法的な決まり事が細かく決まっており、正式な遺言書には法的効力を持ちます。ただ遺言書という名目で書けばいいというものではありませんので、専門家に指南してもらうと良いでしょう。勿論、遺言書がなくても民法の規定に従い遺産分割はされます。ですが法で定められた相続人以外の人に財産を引き継ぎたい場合や、特定の財産を特定の人に遺したかったりする場合には正式な遺言書で示しておかないと叶わない場合がありますし、族が遺産分割で揉めない様にするためにも遺言書を作っておく事が得策でしょう。
遺言書のような法的効力はありませんが、エンディングノートはお葬式やお墓についての希望や大切な人へのメッセージを記しておくことも可能です。財産の管理を他の方に任せたい場合には、家族信託という方法もあります。家族信託は、家族の誰かに財産を託し管理や処分を任せる契約を結ぶことですので、遺言ではできない財産処分が可能になる他、節税がかなう場合もあります。気になる方は家族信託の知識が豊富な弁護士や司法書士へ事前に相談してみると良いでしょう。