遺影の選び方について
遺影選びは葬儀を行う上で難しい問題のひとつです。故人との最後のお別れの時ですから可能な限り故人らしさと参列者の心にも良い印象を刻めるような一枚を選びたいと思う事でしょう。具体的な遺影の選び方のポイントとしてまずなるべく亡くなった年に近いものを選ぶという点が挙げられます。亡くなった年に近いものを選ぶ事により、その年まで生きた証になるのと同時に年齢を重ねた故人の歴史を振り返るきっかけにもなります。逆に実年齢とあまりに掛け離れた写真では違和感が勝ってしまいますので好ましくありません。また、長い間入院生活を送っていた場合などには病床中の姿よりも、病気になる前の元気な姿や病状が良い時に撮影した写真を選ぶ方が良いと言えます。
祭壇の真ん中に飾られる遺影は故人の人柄や生き様を表す大事な写真ですからなるべく良い表情でカメラ目線のものを選ぶ様にすると良いでしょう。ひと昔前までは白黒で無表情の遺影が一般的でしたが、近年はフルカラーで表情豊かなものでも全く問題ありません。写真を選ぶ際は表情の良い写真を選び出してその中から絞り込んでいくと良いでしょう。実際に記念日にプロに撮影してもらった写真や旅行先の写真などの故人が幸せだった瞬間の写真や好きだった事をしている時の写真は表情も豊かですしその人らしさが出てくるものなのでよく選ばれています。カメラ目線のものを選ぶと良いと前述しましたが、参列者がお焼香をする際などに遺影を見た時に遺影と目を合っている感覚になる事ができ、故人との最後のお別れが素敵な思い出として残るといえる為です。
良く写っている写真を選ぶだけではなく、その中からなるべく大きく写っているものを選ぶ事も大事なポイントです。近年の写真では解像度が高い物が多いのでネガが残っていなくても拡大して使用することが可能ですが、あまり小さく写っている写真では拡大した際に写真が荒れてしまうこともあるので注意が必要です。同時にピントが合っていない写真も拡大した時には特にぼんやりとした写真になってしまいますので、ピントが合っていてぶれていないような写真を選びましょう。
最後に、遺影用の写真を選ぶ際に背景や服装が気になってしまう方もいらっしゃると思います。前述した条件を満たしていても、服装がくずれていたり背景に他の人が写りこんでしまっていたり遺影の背景としてはあまりに良い印象を与えない風景であったりすると、遺影にするには気が引けてしまう場合もあるかと思います。近年では写真の加工技術が発達していますので、遺影にしたい写真の服装や一緒に移りこんでいる人や物、風景などが気になる場合は加工する事も可能ですので時間や金銭的に余裕がある場合には選択肢に入れても良いでしょう。また、写真の加工では明暗も調節できますので故人の表情や故人らしさを尊重して写真を選ぶことが大切です。
遺影の大きさについては、この大きさにしなければいけないといったような明確な決まり事は無いのですが、葬儀の祭壇に遺影を飾る際には会葬者が遠くからでもよく見える様にといった理由から一般的には四つ切サイズ(新聞紙1ページの4分の1程度)かA4サイズが多く選ばれているようです。この様に遺影のサイズは自由に決める事が可能ですが祭壇に飾る事を踏まえると余りに小さすぎるサイズでは参列者が見えづらくなるので注意が必要となります。
遺影のフレームについては、かつては写真が白黒だった名残から黒額が一般的でしたが、近年ではカラー写真が主流になってきている背景からフレームについても色額が徐々に増えてきている傾向にあります。フレームは故人が好きだった色などを選ぶ事も故人を偲ぶ一つの手段として良いかもしれません。
葬儀を終えた後の遺影について
ここからは葬儀を終えた後の遺影の置き場所や飾る場合にはどうしたら良いのかをお伝え致します。
葬儀を終えた後はご遺骨安置檀(後飾り)に遺影を飾ります。後飾りは四十九日まで飾ることが一般的とされていますので、納骨が終わった後は後飾りの棚は基本的に不要となります。その為お盆や法事で遺影を使用する予定がない場合には、遺影に敬意を持つことは大切ですが遺影そのものには宗教的な意味はないですから、位牌等と同じ様に捉える必要はありませんので処分してしまっても問題はありません。基本的には供養を行う必要があるわけではありませんので例えば自分で祈りながら焼却することも可能ですが、気分的にそれではあまり良くないと思われる場合には、ある程度の費用や時間は必要ですがお寺や神社で供養をお願いする事も勿論可能です。
遺影の場合は処分する人の気持ちや考え方が大切になってきますのでどのような処分の仕方が一番後悔や心配が残らないで済むかということで選ぶと良いでしょう。遺影を選ぶ際にその後について考えて写真のサイズを小さくする事も一つの選択肢です。近年では核家族が多く仏間のない家庭も多くあるので、大きな遺影を飾るスペースがない場合や置く考えがない場合があると思います。その場合でも小さいサイズにしておくと飾る場所を取らず、置く場所の選択肢が増えるので近年の生活形式に合った方法でしょう。その他、遺影をデータ化してパソコンなどで保存する方法も増えてきているようです。
何点か例を挙げましたがそれぞれの生活や時代によっても遺影のその後の対応は変わりますし、人によっても遺影に対する気持ちや想いは違うものです。いずれにせよ、それぞれに合った形式でも故人に対する敬意を忘れない事が大切でしょう。